ペルシャ絨毯・キリム・ギャッベについて
ペルシャ絨毯は古代ペルシャ(現在のイラン)より、ペルシャ文化、芸術を代表する優れた美術工芸品です。
キリムもギャッベもペルシャ絨毯のひとつ、それぞれ違った特徴があります。ここでは、ペルシャ絨毯の歴史、キリム・ギャッベの特長などをご紹介しています。
歴史
ペルシャ絨毯の歴史は古く、現存する最古のものは南シベリアのパジリク古墳で凍結した状態で1949年に発見された約2m四方の『パジリク絨毯』です。(レニングラードのエルミタージュ美術館所蔵) およそ2500年前の古代ペルシャ(現在のイラン)で生産されたとみられています。デザイン、パイル織りの技術もすでに高い水準にあり、これ以前に絨毯の織りの技術はすでに高度の発達を遂げていたことを物語っています。
しかしながら絨毯をはじめとする繊維の織物は実用品であり、傷めば破棄されてきました。そのため、現存する絨毯の多くは17世紀以降のものでそれ以前の絨毯を辿るにはペルシャの細密画ほかイタリア、ドイツ、フランスまた中国の絵画に加えてヨーロッパの旅行家などが残した記述資料から知ることができます。
ペルシャの国では様々な王朝が勃興、衰退を繰り返しペルシャ絨毯にも多くの変化がもたらされましたが、ペルシャ絨毯の生産は途切れることなく続きました。
現在では、イランで国内用と海外輸出用の絨毯産業に関係する人口はおよそ1,200万人ほどだといわれており、イランがペルシャ絨毯を輸出している国は100カ国を超え、手織り絨毯の生産、輸出ではイランが世界最大です。これは全世界で生産される手織り絨毯の約4分の3を占める規模を誇り、イランの主要な輸出品となっています。
キャスィリ工房(イスファハン)
古典的デザインの絨毯はまさに芸術品
ペルシャ絨毯
キリム
キリムとは西アジアから中央アジア一帯を移動しながら生活してきた遊牧民によって作られた平織りの織物のことです。地域や部族によってそれぞれの特徴を見ることができます。敷物としてだけでなく、袋状にして収納に利用したり、食品の貯蔵に使ったり、カーテンのような間仕切りに使ったりと遊牧民の生活に欠かせないものでした。イランはペルシャ絨毯の産地として有名ですが、優れたキリムも地域や部族によって織られています。キリムの名称は、その地域や部族の名前で呼ばれたりします。
アフシャール 、セネ、ヴェラミン、ビシャー、ホラサーンクルド、カシュガイ、シャーサバ ン、バクティアリ、バルーチ、ルリなど。
シャーサバン族(北西イラン アゼルバイジャン)
古いジャジムと言う織物をほどいて織り直しをした大変手の込んだキリム
ギャッベ
ギャッベとはペルシャ語で『粗い、ざっくりとした』を意味することからざっくりとした絨毯のことを指してきました。現在はイラン南西部シーラーズの遊牧民カシュガイ族によって織られる手織り絨毯のことを意味します。山岳地帯で生活をする彼らが太めのウール糸でざっくりと織り、厚みを持たせて仕上げることで固い地面の上でも快適に過ごせるようになっています。またギャッベの厚みは昼間の太陽の熱をため込み、寒い夜も快適に過ごすことが出来、一日の寒暖の差が激しいこの地では理にかなった絨毯と言えます。
素材は遊牧生活を共にする羊の毛を使い、草や花、樹木などによる草木染めにより様々な文様を作り上げています。
ギャッベ絨毯の特徴である文様は、自然をモチーフにした色で身の周りの自然の景色や出来事を絨毯に織り込んでいく伝統的な文様です。「羊・ヤギ」などの動物文様や「生命の樹 」と呼ばれる木の形のものなどが多く見られます。
遊牧民の手作りであるため、素朴なデザイン、自然の草木染め、不揃いのサイズ、など人間味にあふれ、丈夫で汚れにくく手入れも楽であるため、近年はギャッベの人気も高まり、市場が拡大して品質も向上してきています。
シーラーズ
染めていない生成りウールだけでデザインされているギャッベ